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【松本山雅FC】8年ぶり開幕2連勝 J2復帰へ好スタート

 長い長い“冬”を乗り越え、力強くスタートを切った。今季初めてJ3で戦う松本山雅FC。長丁場のキャンプで徹底的に鍛え、開幕2試合で2連勝と理想的な滑り出しを実現した。名波浩監督は「最高でも最低でも勝ち点6ということを考えると、ギリギリだがなんとか公約通り勝ち点6を持ち帰ってホーム開幕戦を迎えられることには少し安堵している」と胸をなで下ろした。
 
 試練の連続だった。「原点回起」をスローガンに掲げた今季。1月30日に和歌山県串本市でキャンプをスタートすると、初日から高い負荷をかけて追い込んだ。以降も対人トレーニングやランメニューを多く盛り込んだ内容で、プロ4年目の山本龍平は「今までの中でも一番キツいキャンプ」と振り返る。強度が高いことに伴って離脱者も続出したが、指揮官が手綱を緩めることはなかった。
 
 続く鹿児島ではコロナ禍に見舞われた。チーム内に新型コロナウイルスの陽性者が複数出てしまい、トレーニングスケジュールの大幅見直しを迫られる状況に。練習試合も3試合のキャンセルを余儀なくされた。本来であれば、実戦を重ねながら戦術を落とし込みたい仕上げの時期。にもかかわらず、これ以上ないほどの苦境に立たされた。

 
 それでもグループごとの練習にしたりしながらやりくりし、3月9日からは報道向けに再び練習が公開された。佐藤和弘は「コロナを言い訳にはしたくないし、それで負けたとは思われたくない」と力を込め、下川陽太も「他のチームも感染者が出ているところはあるので条件は一緒。勝つことだけを考えて取り組みたい」と話していた。
 
 そして迎えた開幕戦。カマタマーレ讃岐の本拠地に乗り込み、劇的な白星をもぎ取った。先制を許したものの、前半アディショナルタイムに右CKから横山歩夢がヘディングで同点ゴール。高卒2年目でプロ初ゴールを挙げたFWは「昨年はチームとして苦しかったし、自分も悔しい結果に終わってしまった。その意味ではホッとした」と話す。そして後半の終了間際には再びCKから、途中出場の外山凌がボレーでねじ込んだ。

 続くアウェイ・Y.S.C.C.横浜戦も躍動。後半開始早々、ルカオのクロスにまたしても外山が合わせて2試合連続ゴールを決めた。さらに65分、佐藤のクロスに合わせて小松蓮が追加点。山雅のアカデミー出身者初となる記念すべきゴールを決め、リードを広げた。「アカデミー出身の選手たちが憧れの存在になれるのはピッチで活躍する姿。その責任もあるので、こうしてピッチに立って結果を出していくことが大事」と声を弾ませた。

 もちろん万全の準備を整えられなかったから、内容を見れば修正すべき課題も多い。ただ、例年スロースターターの山雅が開幕ダッシュに向けて最高のスタートを切れたのは明らか。外山は「サポーターがたくさん集まる試合で勝つことによって、もっと熱が上がると思うし、松本市民の皆さんも盛り上がってくれるはず」と言う。開幕2試合で延べ約2,000人の山雅サポーターがアウェイに来場。その熱にも後押しされながら、本来の場所へと羽ばたいていく。

取材/大枝令
©️松本山雅FC