松本山雅FCが、反撃の後半戦に向けて準備を整えている。元日本代表MF名波浩監督が6月22日に就任。5勝7分11敗(勝ち点22)の16位で、東京五輪に伴う3週間の中断期間に突入した。インターバルを十分に生かし、進化した姿を示しながらサバイバルレースを勝ち抜いていく決意だ。
山雅は今季も試練に直面している。思うように勝ち点を積めず、失点ばかりがかさむ試合が続いた。クラブは第19節大宮アルディージャ戦が終わった段階で、柴田峡監督を解任。後任に名波監督を招聘した。以降の4試合も1勝3敗と黒星が先行し、J2残留争いの苦境に立たされていることは変わっていない。
しかし、チーム内は明らかに好転。指揮官の発するポジティブな空気が伝播し、眼差しにも言葉にもエネルギーが戻ってきた。名波監督は自らのキャリアをひけらかすことは決してしない。しかし紡ぎ出す言葉は現状の課題を明確に捉えており、それに対する改善策も提示している。
それでいて、選手に対しては垣根なくフランクに接する。時には強い言葉で問題点を指摘する。こうしたマネジメントでチーム全体を前に向かせ、苦しい状況から脱するための熱源となっているのは確かだ。
守備はゴール前で体を張る粘り強さを取り戻した。第21節東京ヴェルディ戦、相手のシュートに対して5人が代わる代わるスライディングして防いだシーンはその象徴。以降も宮部大己、星キョーワァン、常田克人らがGKの手をすり抜けた枠内シュートをカバーするなど、簡単にはゴールを割らせない守備が浸透している。
攻撃に関しては、中心と見込んだ河合秀人に対してボールタッチの回数などを提示しながらアプローチ。中断期間ではそれ以外に組み立てやサイドの攻略などを手ほどきし、勝負の後半戦に向けて洗練を図る。
並行して天皇杯も勝ち進んでおり、初戦の2回戦では琉球を撃破。8月18日の3回戦ではG大阪戦に挑む。リーグ戦もカップ戦も、上を目指す山雅の戦いは止まらない。
<取材/大枝令>
<写真提供/松本山雅FC>
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