6月28日、松本大学人間健康学部スポーツ健康学科の科目「スポーツ科学入門Ⅰ」にて、パラアスリートを招いて学内講座を実施。車いすカーリング日本代表選手の高橋宏美さんによる90分間の講義に、約200名の学生が真剣に耳を傾けた。
高橋さんは北海道新ひだか町出身。22歳でスノーボードをプレー中に受傷し、第12胸椎損傷により車いす生活に。自身の障がいを受け入れることができず悩む日々を乗り越え、2015年から車いすカーリング選手として世界を目指すことを決意する。2016年にチーム「札幌ブレイブス」を結成し、本年3月に行われた車いすカーリング世界選手権大会に日本代表として15年ぶりの出場を果たした。
昔から身体を動かすことが好きだったという高橋さん。「スポーツを通して自分を見つめなおすことができれば、なりたい自分になれる」とほがらかに話す。「進むことだけが成長ではない、とスポーツから教えてもらった」と語り、どん底のときは生来の負けず嫌いも相まって「ここで負けてどうするんだ」と気持ちが切り替わるという。「車いすカーリングをやっているからこそ世界を目指す人生が送れる」とほほえみ、「人が前を向いて生きていくために、スポーツは必要なもの」と締めくくった。
本講座を企画・担当する伊藤真之助専任講師はJPC(日本パラリンピック委員会)医・科学・情報サポートスタッフの経歴を持ち、高橋さんと親交を深めた。「障がいの受け止めについて客観的に自己分析し、伝えることができる人」と、今回の講義を高橋さんに依頼した。6月13日には担当科目「パラスポーツ論」にて、学生たち自身が車いすを使って自走する体験学習も実施した。
スポーツ健康学科生の大半は何らかの形でスポーツに触れた経験から進路を選択。学生達に「スポーツの持つ力を伝えたい」と伊藤先生。「少子化や部活動の縮小などの影響で、長野県はスポーツへの視野が狭いと感じる。世界的アスリートを招くことは貴重な機会。自ら学んで発信できる人間になってほしい」と、本講座のねらいを明かす。高橋さんは「気の持ち方ひとつで人生は豊かになる、ということを伝えたかった。いろんなことに挑戦してもらいたい」と、学生たちへの思いを語った。
2028年には長野県で第27回全国障害者スポーツ大会が開催される。伊藤先生は「この機会に様々なスポーツに関する知識や興味を持って卒業していってほしい。情報提供の機会をこれからも作るので、自分自身でアンテナを伸ばして行動し、学んでほしい」と願いをこめた。
【高橋宏美さん】
【伊藤真之助先生】
取材/佐藤春香