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【松本大学から初の社会人リーグへ】  新たなる「答え」を探しに

日本アマチュア野球界の最高峰、都市対抗野球大会。毎年7月に開催され、全国各地の予選を勝ち抜いた32チームが東京ドームの本戦に出場する。第95回目の今年、松本大学硬式野球部の卒業生3人が出場チームに名を連ねた。

 昨年度卒業生の塚本強矢、小林尚真、石神悠樹の3人はそれぞれ日本製鉄かずさマジック(千葉)、日本製紙石巻(宮城)、エイジェック(栃木)に所属。本学から都市対抗野球大会常連クラスの強豪チームへと選手を輩出したのは初めてのことで、「とりわけ真摯に野球に向き合ってきた3人。非常にうれしいし名誉なこと」と、硬式野球部の清野友二監督は目を細めた。
 これまで卒業後は企業や自治体等への就職が一般的だったが、3人は清野監督とともに第93回都市対抗野球大会の本戦を現地観戦し、社会人リーグに着目した。「レベルの高さに衝撃を受けた」と話す小林(現・日本製紙石巻)は、「初めて心の底から『ここで野球をやりたい』と思った」と力を込める。「鳥肌が立った。『ここで投げたい』という気持ちが強まった」と口をそろえる塚本(現・日本製鉄かずさマジック)は、その願い通り7月21日の初戦6回裏で登板。「清野監督から『卒業後は選ばれた人間しか野球を続けられない』と言われていた。選ばれたことがうれしい」と意気込んだ。
 「松本大学の名をあげるためにもがんばりたい」と小林。清野監督から「人の気持ちを汲み取ることに長けている」と人間性を高く評価され、在学中は3年時の秋から主将を務めながら捕手と4番を担った。上田西高時代は控え捕手として過ごしてきたが、大学での経験を通して「眠っていた本当の気持ちを呼び起こされた」と話し、「『自分はまだできる』と本気にならせてくれた」と感謝を述べる。社会人初年度の今は「とにかくスキルアップを求められている」とし、「実績のない自分が社会人リーグで活躍することが後輩たちの希望になる」と前を見すえた。
 プロ志望の石神(現・エイジェック)は「もう一度チャンスをもらった」と姿勢を正す。昨年度の関甲新学生野球連盟秋季リーグ戦では最多盗塁を獲得した俊足の持ち主で、「相手の守備をかき乱したり、普通は戻ってこられないような球でも得点に繋げたり、自分の持ち味を活かしてチームに貢献したい」と奮起している。
 大学野球とは「答え合わせ」だと清野監督は言う。「多くの学生にとっては、本気で野球に取り組める最後の場所。そこでどう野球と向き合って、どう終わらせるのか」と、日々選手たちに伝えている。「永遠に野球を続けられるわけではないし、いつかは終わりが来るからこそ、卒業してからも野球に打ち込める選手が出たことはうれしい」とほほえみ、「全力で野球をして、あらためて自分なりの答えを出してほしい」とエールを送った。

石神 悠樹(いしがみ・ゆうき)
自分たち3人で社会人チームへのルートを作ることができてうれしい。清野監督には「全力疾走、全力発声を怠る選手は隙がある、隙を見せるな」と言われてきたので、普段の日常生活にも気を遣うようになった。自分自身の得意なことを伸ばして、リーグの中で目立つ存在になれれば、必ずその先は見えてくるので頑張ってほしい。(所属:エイジェック)

塚本 強矢(つかもと・きょうや)
清野監督の元では、「自分に足りないものは何か」と自分から考えて自主練習するようになった。「分からなかったら俺に言ってこい」と言ってくれて、頼りやすい雰囲気がありがたかった。一番大切なのは自分を曲げないこと。その人にしかない良さが必ずあって、それは絶対に人とは違うものだから、曲げずに伸ばしていってほしい。(所属:日本製鉄かずさマジック)

小林 尚真(こばやし・なおま)
野球をする上で、最後の最後は気持ち。清野監督からは「本当に野球に向き合っているのか?」「きつくなってからが上手くなるときだ」という言葉をもらった。野球を続けたい気持ちがあるなら、たとえ道がそれた時も心のどこかに「野球」があると思う。その気持ちから逃げず、ごまかさずに素直に向き合ってほしい。
(所属:日本製紙石巻)

取材/佐藤春香