「やらされる」練習では、決して届かない場所がある。1年生7名、2年生11名の計18名で活動するバトントワリング部の練習場には、指示を待つ静寂ではなく、自ら高みを目指す熱気と活気が満ちている。かつては運動部の応援やイベント出演が中心だったこの部が、全国高等学校ダンスドリル選手権大会への挑戦を本格化させたのは約15年前のことだ。阿部美音子先生による月1回程度の外部指導に加え、約7年前に現顧問の山本利江教諭が就任したことで、チーム強化の歯車はより力強く回り始めた。

チーム最大の武器は、誰に強制されるでもなく、生徒たちが自発的に練習へ取り組む「主体性」にある。山本教諭は、卓球競技出身という自身の経歴を糧とし、時間をかけて「言わずに待つ」という指導方針を確立した。生徒が自ら考え、悩み、行動する過程を尊重し、あえて一歩引いて「背中を押す」スタンスを貫く。生徒たちが自ら上を目指す意志を明確に示し、自分たちで頑張れるチーム文化を育ててきたことこそが、全国制覇という果実をもたらした。


その実績は、今や全国に知れ渡っている。令和6年度全国高等学校ダンスドリル選手権大会では、ミリタリー部門で優勝、メジャーレット部門で準優勝に輝いた。現キャプテンの立花希亜は、1年生での全国初優勝、そして2年生での2連覇を最も印象深い出来事として挙げる。
また、顧問が今のメンバーと共に歩む中で、一つの大きな節目として胸に刻んでいるのが、2026年1月の「全国高等学校ダンスドリル冬季大会」だ。ミリタリー部門優勝に加え、創部初となる「団体総合3位」を掴み取った。強豪校がひしめく全国の舞台で、総合の表彰台にまで手を伸ばしたことは、チームが着実に進化を続けている証となった。


立花キャプテンが語る競技の魅力は、何より「仲間と同じ目標に向かって頑張り、支え合うこと」だ。未経験者や運動経験の少ない1年生も多い中、新しい技や未知の動きに挑戦することは容易ではない。しかし、競技を通じて学んだ「最後までやり抜くこと」が、技術を習得するためには必要だと言う。キャプテンとして、1・2年生の架け橋となり、互いに高め合える雰囲気づくりに心を砕きながら、チーム全体のモチベーションを支えている。
現在の課題は、さらなる表現力や統一感の向上に向けた「身体づくり」と「基礎体力」の強化だ。夏の全国大会を見据え、フィジカル面の底上げを図ることで、より完成度の高い作品づくりに挑んでいる。山本教諭は「ここで経験した頑張り抜く力は、社会に出てからも必ず役に立つ」と言い、生徒たちにエールを送る。楽しい時間だけでなく、苦しい時やうまくいかない時も、目標を見失わず仲間と共に成長し続けること。その先に待つ最高の「優勝の景色」を全員で見るために、バトントワリング部は自らの意志で、夢に向かって力強く踏み出している。

【キャプテン 立花希亜 さん】
1人では作れない、みんなで同じ目標に向かって支え合う今の雰囲気が大好きです。どんなに難しい技でも、全員で『最後までやり抜く』ことを大切に、日々の基礎練習や体づくりを強化して、みんなで三連覇を達成したいです。

【顧問 山本利江 さん】
「言わずに待つ」姿勢を貫き、生徒が自ら考え行動する力を信じて見守ってきました。目標に向かって壁を乗り越えた経験は、社会に出た際も必ず役立ちます。努力を誇りに、夢へ挑戦し続ける姿を全力で応援しています。

取材/児玉さつき
