未就学児から大人までの幅広い年代が同じ道場に集い、ともに稽古に打ち込む岡谷市柔道協会。1950年に発足し、今年で創立75周年を迎える歴史ある団体だ。コロナ禍には3人にまで落ち込んだ生徒数も、現在は24人まで増加。パリ五輪で塩尻市出身のカナダ代表・出口クリスタが金メダルを獲った成果などが影響しているという。
瀧澤健一会長は「とにかく楽しく稽古に励んでもらいたい」。未就学の子どもたちにはヘッドギアを装着させるなど、安全面に配慮した練習を心掛けている。
指導にあたるのは瀧澤先生を含む6人。全員が全日本柔道連盟公認の資格を持ち、技術指導に加えて、柔道の創始者・嘉納治五郎が唱えた「精力善用」「自他共栄」の理念も重視する。「柔道を続けて強くなれたからこそ、人を思いやることのできる、やさしい人に成長してほしい」という願いが込められている。
小学6年生の名執寧花さんは「先生はみんな優しく指導してくれる。技のかけ方やタイミングなども丁寧に教えてくれるので、とても分かりやすい」と話す。
その成果は、昨年6月の長野県少年・少女柔道チャンピオン大会での活躍に表れた。小学6年男子45㎏以下級に出場した米窪煌くんが3位、寧花さんも小学6年生女子40㎏以下級でベスト8。2人とも長野県強化指定選手に選出された。
稽古では基本的な練習に加え、年齢や体格差があっても安全かつ効果的な練習ができるよう「三様の稽古」を取り入れている。これは「引き立て稽古」「互角稽古」「捨て(かかり)稽古」という3つの方法で構成される。
「引き立て稽古」では、自分より実力が下の相手と組む際に互いの安全に配慮しながら、正しい技の入り方や受け方を意識する。「互角稽古」は同等の相手と正々堂々と技を掛け合う方法だ。「捨て稽古」では格上の相手に臆することなく積極的に技をかけて上達を目指す。練習の後半では「引き立て稽古」と「捨て稽古」を実践し、子どもたちは勇ましく大人に挑んでいた。
3月中旬には「第45回全国少年柔道大会長野県予選会」に出場。5人の団体戦で行われるこの大会は、個人の力試しだけでなく「チームのために頑張る」気持ちを育てる場でもある。
「試合の勝敗は、勝っても負けても精一杯戦った結果。まずは頑張ったことを褒めて、労うようにしている」と瀧澤会長。同時に「負けた時にはその悔しさをバネにできる強さも育ててあげたい」と、子どもたちの逞しい成長を願っている。
【新小学1年生 原大和くん】
柔道をしていたお母さんに勧められて、去年の3月から柔道を始めました。得意なのは寝技で相手をひっくり返すことです。先生たちが優しく教えてくれたおかげで、受け身も上手に取れるようになりました。
【新中学1年生 名執寧花さん】
小学4年生から柔道を始めました。最初は負けた悔しさから泣いてしまうこともあったけれど、今では負けても次に頑張ろうと思えるようになりました。中学生として出場する大会では、1回でも多く勝てるように頑張ります。
【会長 瀧澤健一さん】
柔道の技術面の指導もそうですが、挨拶や言葉遣いなど、礼儀に関する声掛けもするように心掛けています。また、年上や年下など、年齢が違うメンバーと関わり合うことで、社会性も養うことができると考えています。
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取材・撮影/児玉さつき