高校スポーツ

【岡谷工業高等学校 ラグビー部】心を一つに花園目指す

晴天のグラウンドでOBの胸を借り、懸命に汗を流す岡工ラグビー部の選手たち。伝統校らしい光景が、今日も繰り広げられている。
 岡工ラグビー部は1966年(昭和41年)に発足。創部から約60年間で、花園ラグビー場で開催される全国高校ラグビー大会へ32回、春の選抜にも長野県代表として7回の出場経験を持つ名門だ。

 OBには、ラグビー国内最高峰リーグ「リーグワン」ディビジョン3のヤクルトレビンズ戸田に所属し、セブンズの日本代表経験を持つ大石力也や、富士フィルムビジネスイノベーショングリーンエルクスの石澤孔などを輩出してきた。
 今年4月に岡工へ赴任し、現在チームの指揮を執る白鳥憲之監督は、以前にも岡工ラグビー部の顧問を務め、11年間の任期中に8回、花園出場を果たしている。自身の出身校でもある岡工について「部活動を通して、常に人間形成についても意識しながら指導を行っている。それが岡工の伝統でもある」と話し、選手たちの人としての成長を重んじる。
 15人制で行われるラグビーはチームスポーツの中でも特にチーム人数が多く、フッカーやフルバック、ナンバーエイト、ウィングなど、ポジションも多岐にわたる。「ポジションが多いということは、それだけいろいろなキャラクターがいる。大きい人、小さい人。足の速い人、力が強い人。そういうメンバーが自分の個性や強みを生かしながら心を1つにして向かっていく。そこにラグビーの醍醐味がある」と白鳥監督は語る。
 ゲームキャプテンを担う馬場優大も「ラグビーの良さは自分の個性を生かせるところ」と笑顔を見せ、「自分は184cmの高身長を生かしたラインアウトが得意。タックルを受けても上半身が自由なので、パスをするのには支障がない」と胸を張る。
 「One for all, All for one」の精神にもあるように、1トライを奪取するためにチームが一丸となってプレーに臨むラグビー。「普通なら、自分よりも大きな相手にタックルにいくのは怖い。ただ、1対1ではできないことも、仲間のことを想い、『自分がやらないと、仲間の誰かがやることになる』と思えば、不思議と立ち向かっていくことができる」と白鳥監督は説明する。
 そのためには「心技体というと心が先にくるが、ラグビーでは体技心でもいいくらいだと思う。まずは体を作って、ケガをしない技術を身につける。そうして自信がつけば、仲間のためにという心もより強くなり、勇気をもってタックルにいくことができる」と独自の理論を展開する。


 県総体では4位に終わり、悔し涙をのんだ。「3年生6人は、それぞれ個々の能力が高く、体もいい、スキルもある。その3年生を中心に、いかに1、2年生のレベルアップを図るかということが現在の課題」と白鳥監督。
 県総体後のミーティングでチームの課題を分析し、ディフェンスの強化に重点を置きながら、スキルアップとフィジカルの強化に励む選手たち。目標は「花園出場!」。チーム力を結集し、夢の舞台を目指す。

【チームキャプテン 3年 矢久保瑛斗 さん】
ラグビーは、ラグビースクールで指導を行う祖父と父親の影響で3歳から始めました。それぞれの個性を生かせることと、試合終了後はノーサイドになって、敵味方なく讃えあえることがラグビーの魅力だと思います。大学でもラグビーを続けて、将来は地元に戻ってスクールを手伝い、競技人口の増加に貢献したいと考えています。

【ゲームキャプテン 3年 馬場優大 さん】
年中の時、ラグビーをしている父親の影響で、始めました。今の目標は花園出場。それに向け、試合の最後までベストを尽くせるように、体重を増やしてフィジカルを強化したり、基礎的なことをしっかりと固めようと努力しています。卒業後は大学でもラグビーを続け、リーグワンで活躍できる選手になりたいです。

【監督 白鳥憲之 さん】
高校大学とラグビーに打ち込み、協力することの大切さを実感しました。競技である以上、勝敗はつきものですが、勝つことだけがすべてではないと考えます。みんなが心を一つにして、それぞれの個性を生かしながら立ち向かっていく。選手たちには、そんなラグビーならではの魅力を味わってほしいと願っています。

取材・撮影/児玉さつき