岡谷工業高校ラグビー部は、1966年の創部以来、全国高校ラグビー大会「花園」へ通算32回の出場を誇る名門チームだ。現在の男子部員数は29人。実は、ほとんどの選手が高校からラグビーを始めた未経験者だ。チームをまとめる河合悠暉キャプテンも友人に誘われて入部した。チームは「全国大会出場」という目標を全員で共有し、日々の練習に励んでいる。

練習環境にも恵まれている。同校の第2グラウンドは標高約900メートルに位置し、夏でも比較的涼しい。さらに、OB会が整備してくれた天然芝のグラウンドだ。この素晴らしい環境を活かし、夏には愛知県など猛暑に悩む他県の強豪チームへ声をかけ、多くの練習試合を組んでいる。
このグラウンドを舞台に、2026年7月11日(土)、「創部60周年記念イベント」が開催された。当日は現役の部員だけでなく、多くのOBや地域の人々、総勢約250人が集まった。実行委員長の白馬信さんは、「グラウンドから足が遠のいていたOBや、地域の子どもたちをもう一度呼び戻したかった。OBの父親世代にも、ぜひ自分の子どもを連れてきてほしかった」と語る。その願いから、未来のラガーマンを育てるラグビークリニックが実現した。
クリニックには、地元・諏訪湖ラグビースクールのほか、中南信エリアから約40人の子どもたちが参加。まずは全員で、ラグビーボールを使った鬼ごっこでウォーミングアップを行った。その後は学年別に分かれ、低学年はタグ取り鬼ごっこからタグラグビーを体験。中学年はタックル、高学年と中学生は1対1のフットワークなどに挑戦した。講師を務めたのは、いずれも日本の第一線で活躍してきた同校OBの元トップリーガーや現役選手たちだ。今井通さん、宮澤永将さん、星野将利さん、そして現役のリーグワン選手として活躍する大石力也さんの4人が指導にあたった。最初は緊張していた初心者の子どもたちも、講師や先輩たちからアドバイスを受けながら、笑顔でラグビーを楽しんでいた。父親がOBで、初めてラグビーボールに触れたという工藤堅樹くん(小学1年生)は「鬼ごっこやタグラグビーが楽しかった。初めてだけど楽しくできた」と笑顔を見せた。同じく父親がOBで、小学1年生からスクールで活動している小学2年生の和田結陽菜さんは「スクールの子以外にも、いろんな子と一緒にできて楽しかった。ボールをもらって攻めたり、タグを取ったりするのが楽しい」と魅力を語る。結陽菜さんの妹で年中の和田悠瑠菜さんも「転んだけど大丈夫だった。いろんなことがたくさんできて楽しかった」と元気に話してくれた。



その後は甲府工業高校を招いた招待試合やOB戦が行われ、グラウンドは終日賑わいを見せた。
現在、岡谷工業は2022年以来全国大会出場は叶っていないが、今このグラウンドで汗を流している選手たちが一生懸命やっていないわけではない。白鳥憲之監督は「試合結果だけでは見ることのできない、子どもたちが楽しみながらも必死に突き進んでいる姿を、OB会をはじめ多くの人に直接伝えたかった」と、イベントに込めた熱い想いを語る。
ラグビーは1人では勝てないスポーツだ。体格が大きな人も、足が速い人も、それぞれが自分の武器を活かして一つのボールを繋いでいく。そして、激しいプレーを通じて、一生モノの信頼できる仲間に出会えることも魅力だ。河合キャプテンをはじめ、ほとんどの先輩が高校から始めているためスタートラインはみんな同じ。日々楽しみながら一生懸命に楕円球を追いかける岡谷工業高校ラグビー部と地域のスクールは、新しく挑戦する未来のラガーマンをいつでも温かく迎えてくれる。

【監督 白鳥憲之 さん】
春に敗れはしましたが全国へ行く目標はブレません。未経験者が多いチームだからこそ、実戦とビデオの振り返りでゲーム理解を深めています。この夏も合宿や多くの練習試合を行い、さらなるチームの強化を図ります。

【キャプテン 河合悠暉 さん】
友人に誘われて高校から始めました。他のスポーツにはないコンタクトの部分が、うまく決まると楽しいです。初のキャプテンで緊張しますが、自らのタックルで引っ張り、3年生を中心にチームを盛り上げたいです。

取材・撮影/児玉さつき
