人数は少ないけれども、バレーボールを諦めない。岡谷北部中の男子バレーボール。「少数精鋭」という言葉がよく似合う6人の部員たちは、日々結束を深めながら切磋琢磨している。「好き」という気持ちから始まって「勝ちたい」というこだわりを持ち、少人数ならではのチームワークを生かしてボールを繋いでいく。
「初めて練習を見たとき、彼らが『好きでバレーをやっている』ということが伝わってきた」。4月から顧問を務める横沢和樹教諭は話す。中学入学以前からのバレーボール経験者はおらず、全員が入学後に「バレーボールをやりたい」と思って入部してきたメンバーがそろう。
誰か1人でも欠けたら試合に出ることはできない。だからこそ、「その責任感を全員が負うので、集中して取り組める」と、3年生の窪田奏(そ)羽(う)主将は話す。バレーボールは「繋ぐ」スポーツ。一人ひとりが自分の役割を意識し、高い責任感を持ってプレーすることで連帯感が高まるという。「人数が少ないので、一人ひとりの関わりが濃い。連携には自信がある」と、笑顔をのぞかせる。
メンバーの入れ替わりがないからこそ、お互いへの理解も深い。コートの内外を問わず、日々のコミュニケーションの中からもチームワークは磨かれる。「メンバーそれぞれの強みがある。それがうまく嚙み合えば、良いプレーに繋がる」と窪田主将。司令塔としてチームを牽引する立場からも、それぞれの個性を俯瞰してチームプレーに生かしている。
地域の子どもの数は年々減り、中学校の生徒数そのものが減少傾向にある。岡谷北部中の2023年度の全校生徒数は301人、うち男子は135人。新入生は男女あわせて77人と、生徒数の減少とともに部活動のさらなる縮小も危惧されている。
それでもやはり、そこでしか学べない経験はかけがえのないものだ。授業だけでは学べない忍耐や努力、挨拶や礼儀などの学びの場となるのも存在意義と言えるだろう。「部活動を通して学校生活が充実し、学校生活を通してさらに部活動も充実する。『勝ち』を目指すのもひとつの目標として、そこに向かって取り組んでいくことに意味がある」と横沢教諭。上達を目指すためには、普段の挨拶ひとつから。コートでの絆を強めて「人間力」を高めれば、いずれコート外に向かう一歩をも力強く支えるだろう。
【横沢和樹教諭】
個の能力だけではなくチーム力が問われるのが、チームスポーツの面白いところ。自分で考える力を伸ばすことが技術力に繋がっていきます。彼らが自分で育っていく手助けができればと思っています。
【窪田奏羽主将】
バレー部で学んだ「粘り強さ」「諦めない心」を学習にも生かしています。中体連ではひとつひとつのプレーを丁寧にして、3年間の悔いが残らないような清々しいバレーができたらと思います。
取材・撮影/佐藤春香