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【小布施敬太:空手】      小さな村の小さなヒーロー

人口4,000人弱の筑北村から、全国に挑んだ小さな拳士がいる。小布施啓太くん。スポーツ万能で運動神経がよく、全日本少年少女空手道選手権(8月8〜10日、東京武道館)1年生男子組手に出場した。初めて大舞台を経験して大きな刺激を受けた様子で、「全国で優勝できるようになりたい」と思いを新たにしている。

保育園年長から空手を始め、ちょうど1年。めきめきと頭角を表し、5月の県大会を制して切符を手にした。筑北村出身の子どもがスポーツの全国大会に出場する例は珍しく、村役場では職員総出での壮行会も開かれた。

トーナメント形式の全国大会は2回戦からの出場。しかし初戦を勝ち抜いてきた千葉県の選手に0ー6で敗れ、「悔しかった」と振り返る。そこでの課題を踏まえ、現在は点数の高い「裏回し蹴り」などの足技を磨く。従来は突きを得意としており、蹴りという新たな武器を手に入れてパワーアップしたい考えだという。

「もともと身体を動かすのが得意で、なんでも見ただけですぐ技術を盗める」と話すのは父・啓樹さん。スケートボードも自転車もすぐ乗れたという。通っているのは安曇野市に拠点を置く哲士義塾道場。笠原哲雄師範は「運動神経が良くてすばしっこい。どんどん伸びていくと思う」と成長に期待を寄せる。

空手を始めたのは、5歳上の兄・陸玖くんの影響だった。麻績インターから長野道に乗って安曇野市の道場まで週3日、啓樹さんの運転で送り迎え。土日には県連盟や県協会の強化練習に積極的に参加しており、家では兄から教わることもあるという。

「突きや蹴りが楽しい。裏回し(蹴り)はちょっと難しい」。さらに最近は組手だけでなく型もぐんと伸びている。「型も気持ちが出てきた」と笠原師範。自分自身でも「気合を出してかっこいい」と前向きに取り組んでおり、組手と同等かそれ以上の自信が芽生えてきたという。

哲士義塾は日本空手協会所属の道場。競技性もさることながら、まず礼節を重んじる武道としての側面を大切にする。笠原師範は「相手を打ち負かすことが目的ではなく、相手を尊重すること」と強調。小布施くんを含めた門下生全員にその精神を伝え続ける。

今回は全国大会に初めて挑み、レベルの違いに気付かされたという。「努力して結果が出て、それで自信がつく。逆に負けても自信を失うのではなくて、さらに頑張る気持ちを養ってほしい」と啓樹さん。7歳、まだまだ伸びしろは無限大だ。

 

小布施 啓太(おぶせ・けいた)

空手

2017年4月13日生まれ、筑北村出身。6歳の時から兄の影響で空手を始める。運動神経に恵まれており、敏捷性の高いステップワークからの突き技を得意とする。空手での目標は「黒帯」と「全国大会優勝」。将来の夢は「毎回いろんなことを言う」(父・啓樹さん)が、本人いわく、なりたいのは医者。

 

取材・撮影/大枝令