ダブルゴールを目指すチームだ。
1つ目はプレーヤーとしてのゴール。中学校の部活動地域移行に伴って2019年に創設された。U15長野県バスケットボール選手権で男子2位、女子4位。2021年の第2回大会も男子3位と好成績を残した。トレーニングは本番さながらの雰囲気。藤村コーチは情報のアップデートに務めており、「一番の本質は子どもたち自身が満足して、成長を感じられているかどうかということ。そのためには自分も研鑽を積み、彼らが次のカテゴリーに進んでも通用する力を付けてあげなければいけない」と自分に矢印を向ける。
そしてもう一つは、人間としての成長。「感謝の気持ち」に重きを置く。藤村コーチは「私が中学生の時、満足に練習や試合ができないこともあった。だからこそ今は、たくさんの人のサポートのおかげでバスケットボールができる環境が整っていることに、感謝の気持ちをもってもらいたい」。その思いは選手にも伝わっており、キャプテンの下條叶夢は「塩尻BBC Raisinで感謝の気持ちの大切さを学んだ。親が送迎してくれるから練習ができるし、コーチが練習や試合、遠征に連れて行ってくれる。そういったことすべてに感謝している」と話す。
根底にあるのは、藤村コーチ自身の体験。自らも大学生(クラブ)までバスケットボールを続けてきた経歴を持ち、「中学生の頃は、自分が誰よりも点数を稼いで、誰よりもリバウンドを取って、誰よりも走ってディフェンスをすれば勝てると考えていた。いわゆる一匹狼。自己中心的な考えでチームに迷惑をかけていたと思います」と振り返る。
その考えが一変したのは高校生の時。東海大学付属諏訪高等学校(当時、東海大学付属第三高等学校)へ進学し、二人の顧問の先生の指導の下、バスケットボール中心の生活を送っていた。しかし、腰を負傷。コンスタントに試合に出場することができなくなった際、先生とチームメイト、家族が支え続けてくれたという。「高校で“チーム”と“感謝”を学びました。みんなのおかげで今の自分がいます」と目に涙を溜めながら語った。
だからこそこのチームでは、周囲の全てに対して感謝の念を伝えたいのだという。現在、女子は個人スキルを磨くスクールとして活動しているほか、男子は選手コース14人、練習生5人が週3日の練習に打ち込む。選手たちが成長を実感する舞台として、10〜11月には第1回 県U15クラブ選手権がある。藤村コーチ、下條キャプテンともに「県大会で優勝して全国大会に出たい」と意気込む。それはおそらく、保護者や周囲に感謝を示す恩返しでもあるのだろう。
長野県1熱い男!
藤村 拓也コーチ
選手たちが高校、大学と次のカテゴリーに進んでも通用できるように、一人ひとりの寄り添った指導を心掛けています。また、中学生年代は心の変化が激しい時期でもありので、バスケットボールのスキルアップと同時に、人間形成の面にも力を入れています。
長野県1の元気印!
キャプテン 下條 叶夢
小学4年生の時にすごく上手な先輩と一緒にバスケットボールをしたことが楽しくて、それをきっかけにバスケットボールを始めました。競技をしていて楽しいと感じるのは、みんなで声を出して練習をしたり、試合で勝った時に喜んだりできることです。
取材・撮影/児玉さつき