サッカーの楽しさを伝えたい――。
永井一成代表をはじめ、指導陣はそんな思いを日々の活動に落とし込む。現在はチームを持たず、スクールにターゲットを絞って活動。永井代表は「サッカーの楽しさを伝えたいという気持ちは少年団の時から変わっていないが、スクールという形態の方がそれをより伝えやすいと感じている」と話す。
1970年に創設された塩尻SSSを前身とする。少子化などに伴う団員の著しい減少によって、一時は閉団も視野に入れて検討。そして2年ほど前から、スクール部門のみの活動へと舵を切った。
「クラブチームと並行してスキルアップを目指したい子、他の習い事と掛け持ちしている子。小さくて自分がまだどんなことに興味があるのか分からず、とりあえずサッカーで体を動かしたいという子もいる。どんなきっかけでもいいから、まずはサッカーを面白いと感じて、将来につなげてほしい」永井代表はそう話す。
門戸を広げ、一貫してサッカーの楽しさを伝え続けてきたことで、スタート時は8人だったスクール生も今では50人超。そのうち女子は17人を占め、遠山陽一コーチが女子専属で指導に当たる。
「女子の場合はボールを足で扱うことに慣れていない子が多い」と遠山コーチ。鬼ごっこやドッヂビーなどのレクリエーションを通して体の動かし方を学び、徐々にサッカーの動きへとシフトしていくという。
子どもたちの「うまくなりたい」というニーズに応え、全体練習後には1時間ほど個別練習の時間も設けるようになった。「スタート時は1人だったので1対1のパス練習から始めたのですが、今では徐々に人数が増えて練習の幅も広がっています」と目を細める。
そうなるとやはり、実戦で力を試したくもなるものだ。実際にそうした声も高まっているといい、田中良成チーフコーチは「今後はサッカーの上達を実感し、モチベーションを上げるためにも練習試合などを組んでいきたい」と見据える。
こうしてサッカーの「楽しさ」を粘り強く地域に広げていく塩尻東SSS。クラブチームと並行している生徒の保護者からは「塩尻東SSSに入ったことで楽しさを思い出し、ユニフォームで番号をもらえた」とのメッセージももらったという。小学1年生からサッカーを始めた関澤美結は「将来はサッカーの楽しさを伝えられるようなサッカーのコーチになりたい」との夢を持つ。
「サッカーの楽しさを実感し、中学、高校、大学とサッカーを続けてほしいというだけでなく、大人になってもう一度始めようと思ってもらうのでも構わない。とにかくサッカーが好きで、サッカーに関わる人口を増やしていきたい」と永井代表。草の根からサッカーの魅力を発信し続けていく。
小学3年生/越立 龍空 くん
もともとサッカーに興味があり、体験に参加して楽しかったので始めました。うれしかったことは、ミニサッカー大会でキーパーとして出場し、チームのMVPに選ばれたことです。将来はキーパーでプロのサッカー選手になりたいです。
小学4年生/関澤 美結 さん
サッカーを始めたのは弟がしていたのがきっかけです。最初は怖さもありましたが、今は高学年の男子にも立ち向かえるようになりました。引っ込み思案だった性格も、サッカーで友達と触れ合ううちに、積極的に話しかけられるようになりました。
代表 永井 一成 さん
スクールという形態から、スタッフ全員が全スクール生の名前と顔を把握し、一人ひとりの個性を大切にするように心がけています。試合に勝つためではなく、サッカーの上達を通じてはもちろんですが、友達との触れ合いや体を動かすことへの楽しさを感じてもらえると嬉しいです。
取材・撮影/児玉さつき