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【塚原直貴 走り方リセット講習会】       体の動かし方を見つめ直す

2008年の北京オリンピック陸上男子4×100mリレーで銀メダルを獲得した塚原直貴さんを講師に招き、月に約1回のペースで開催される「走り方リセット講習会」。固定概念、今までの習慣を一回フラットにしてほしい――との願いから命名されたものだ。

 主催する「株式会社ZERO」代表取締役・丸福整骨院グループの丸山主税代表は、「陸上選手に限らず、アスリートは誰でも歩いたり走ったりする。そのベースを上げることによって、競技のパフォーマンスを上げることができる。そんな想いから、あえて『陸上教室』とは銘打たずに開催している」と話す。
 この日の講習会はピラティススタジオM&M(田沢店)代表トレーナーの川上正美先生によるエクササイズ、ストレッチからスタート。腹筋、股関節、背骨のトレーニングといった全身運動で身体をほぐし、正しい首の位置など、走る際の正しい姿勢を確認。その後は、常にお腹に力を入れて体の使い方を習得するための「姿勢をつくるトレーニング」、足の上下運動による「可動域を出すトレーニング」、可動域をしっかりと出しながら実際にハードルを越える「ハードルまたぎ」などのトレーニングを実施した。


 陸上に特化している人だけでなく、体を動かすことから始めたいという人にも伝わるように「今までの競技を通して得てきたものを言語化する。自分だけが分かる言葉ではなくて、なるべく広く、最大公約数的な言葉遣いを心がけている」と塚原さん。
 トレーニングを終え、最近本格的に陸上を始めたという中学3年生の高橋くんは「講習会は分かりやすく、ただ走るだけでなく、基本的な体の使い方や仕組みを知ることができる。今回で3回目の参加だけど、実際に以前よりもタイムが良くなっているのでうれしい」と笑顔を見せる。
 社会人になって始めたトレイルランニングのために走り方を学びたいと初めて講習会に参加した相子さんも、「部活動で陸上部に入っていたわけではなく、社会人になって走り方を教わる機会もなかったのでとても新鮮だった。使っていない筋肉を使い、トレーニングをしている実感が持てた」と満足感を口にした。
 体の動かし方を習得するためには「一方向からだけではなく、参加者との相互作用が不可欠」と塚原さん。例えば「体を曲げる動作についても、自分だったらどう曲げるんだろうということを体得し、自己発生してもらう。その際にクセが出てしまっているようであれば、外から見ている僕らがアドバイスを行い、その人の可能性を広げることができる」と話し、参加者の主体性を重んじる。


 塚原さんは「ケガをきっかけに自分の体に目が向くというのが一般的な流れだと思う。順風満帆なままだとどうしても目が向きにくいとは思うが、一度立ち止まって正しい動きや姿勢を理解できれば、パフォーマンスの向上だけでなく、ケガの予防にもつなげることができる」と言う。
 今回5回目の参加となる小学6年生の須澤くんは「スキーのトレーニングとケガ予防のために参加している。股関節が動かしやすくなり、ケガをしにくくなった」と効果を実感している。
 講習会を主催する丸山さんは「体づくりや動作のベースとなるところを順序立てて上手に組み立てることができるのはトップアスリートならでは」と語る。そんなトップアスリートから直に指導を受けることができる貴重な機会といえるだろう。

【プロフィール】 塚原直貴
長野県岡谷市出身。東海大三高(現東海大諏訪)、東海大学を経て富士通の陸上競技部に所属。2008年北京オリンピックに出場し、男子4×100mリレーの第1走者を務めて銀メダル。現役引退後も次世代アスリートの育成に向け、スポーツチームのスプリントコーチや講演、解説など多岐にわたり活躍している。

取材/児玉さつき