地域スポーツ

【信州大学全学サッカー部】              「学生主体」を武器に変え    自ら切り拓く

専任の監督はいない。チームを動かすのは、学生たち自身が築いた強固な組織力だ。
 信州大学全学サッカー部の最大の特徴は、チームを取り巻くあらゆる営みを、学生自身の手だけで成り立たせている点にある。一般的な大学サッカー部のように専任監督が常駐するわけではなく、練習メニューの作成、戦術分析、試合運営、練習場の確保、用具の管理、広報活動、さらには遠征費や大会参加費を見据えた資金面まで、部員が役割を分担しながら動かしている。サッカーをプレーするだけではなく、組織を運営する当事者として日々工夫を凝らしていることが、このチームの強さの土台になっている。

 現在の部員数は55人。松本だけでなく伊那、上田、長野など複数キャンパスにまたがる環境の中で、全体練習は週3回、地区ごとの活動も含めれば週4、5回の練習を積む。移動時間が練習時間を上回る日もあるが、それでも集まり続けるのは、競技への強い思いと、自分たちの手でチームを前進させる責任感があるからだ。

 今季は昨季の反省を踏まえ、ベンチワークや試合中の指示系統も整理した。キャプテンの河野太郎が監督兼プレーヤーとして全体像を描き、状況に応じて副キャプテンの鈴木将悟らがベンチから判断を下す。さらに今年は、昇格を本気で狙うための土台としてフィジカル強化にも大きく舵を切った。
 昨季の北信越大学サッカー2部リーグでは4位でプレーオフに進んだものの、あと一歩で昇格を逃した。そこでチームが課題として明確に見据えたのが、90分を通して戦い切るためのフィジカルである。昨季は終盤に走り負ける試合もあり、今年は私立の強豪校が同じリーグにいることも踏まえ、従来の延長線上では勝てないという危機感を共有した。幹部陣が話し合いを重ね、練習の中身だけでなく、体づくりそのものを見直したことが今季の大きな変化である。



 強化は感覚頼みではない。長野保健医療大学の協力を受け、外部トレーナーがフィジカルトレーニングのメニューを作成し、持久力や走力を数値で確認しながら成長を積み上げている。部員それぞれもジムに通い、継続的に身体づくりに取り組む。学生主体で運営するチームだからこそ、課題の発見から改善策の実行までを自分たちで決め、自分たちでやり抜く意識が強い。実際に今季は、同じ国立大学との一戦でも走り勝った手応えをつかんでいる。その積み重ねの先にあるのが、今季の目標である北信越1部リーグ昇格だ。学生だけで運営し、学生だけで指導し、学生だけで課題を解決する信州大学全学サッカー部は、鍛え上げた身体と主体性を武器に、昇格への挑戦を続けている。

【各キャンパス代表】
※左から副キャプテン・鈴木将悟さん、キャプテン・河野太郎さん、髙野雅人さん、押川恒輝さん

■キャプテン 河野太郎 さん
学生だけで運営するからこそ、一部の人の考えだけで動くのではなく、お互いに意見を言い合えるチームであることを大切にしています。全員が納得した上で一歩ずつ前へ進み、自分たちの目指す最高のゴールをつかみ取ります。
■副キャプテン 鈴木将悟 さん
学生だけで運営する難しさはありますが、その分だけ一人ひとりが自分で考えて行動する力が身に付きます。遠征や運営面も含めて、全員で支え合える集団だからこそ、目の前の大きな目標に全員で本気で挑むことができます。

取材・撮影/児玉さつき