3月初め、ITF(国際テニス連盟)のジュニア大会出場のため、タイのバンコクに滞在していた。試合はシングルス、ダブルスともに2回戦敗退。強豪がそろった大会だっただけに気持ちは上がったが、壁の高さも感じた。「2回戦負けは悔しいけれど、ランキング上位の選手とプレーしたのはいい経験になった」と、沈んでばかりもいられない。前週はエジプトでの大会に出たばかり、2週間後にはマレーシアへ飛ぶ。
2021年には16歳以下の国別対抗戦ジュニアデビス杯に、日本代表3人の一員として参戦、団体6位に貢献した。初の日本代表になっての大きな国際舞台に、「海外の選手は心身ともにタフだった」と振り返る。帰国してからは、ジムでのトレーニングやランニングの質・量を見直して体力強化を図るように。また、「ミスをしたら大きな声を出してイライラを発散したり、逆にポイントを取っても淡々と冷静さを保ったり。各選手が『表現』をして、メンタルコントロールをうまくしていたことが印象的だった」と話し、自分なりの「表現」を探っている。
180㎝を超える長身から繰り出すサーブ、力強いフォアとボレーが特長だ。得意の前に出てのネットプレーは、常に攻めの姿勢を意識している表れで、さらに精度を高めて、ほかの選手にはない「武器」として磨きをかけている。一方で、しぶとくプレーすることが課題だ。「競り合った中でも打ち負けない『しぶとさ』を高めたい。攻めのプレーを続けることで相手にプレッシャーをかけられ、自分の得意な形で試合を展開できるようになると思う」と、自ら分析する。「エムスタイルテニスアカデミー」代表の斉藤政宏コーチは「間違いなく、日本ジュニアのトップレベル。本人は将来、世界を見据えており、普段から自分で考えて練習するよう自主性を尊重している」と期待を寄せる。
アカデミーで練習をしながら、「人としても成長できる環境がある」と松本第一高校へ進学し、現在3年生。国内外の大会を転戦しながらの通学だが、「高校生活は楽しい! 教職員の方や友だちに本当に支えられている」と感謝する。今年6月には全仏オープン・ジュニアがある。ジュニアの世界ランキングを50位台に上げ、この大会に出るのが今の目標。クレー(赤土)コートに立ち、応援、支えてくれる人たちの期待に応えたい。
中島暁(なかじま・さとる)
2006年、塩尻市出身。5歳の頃、姉の影響でテニスを始める。「エムスタイルテニスアカデミー」(松本市)代表の斉藤政宏コーチの指導の下、頭角を現す。2021年の全日本ジュニア選手権16歳以下男子シングルスでベスト4に入り、ジュニアデビス杯の日本代表に選出。同アカデミー所属、松本第一高校に通いながら国内外の大会を転戦する。
取材/斉藤茂明