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【フォルツァ松本FCセカンド】      蹴って、走って、笑い合う     サッカーが生む魔法

「サッカーが好きで、ボールを蹴ったらやっぱり楽しい。そんな環境を守っていきたいと思う」

そう話すのは、長野県中信サッカーリーグの一角、「Fー21リーグ」に所属する社会人サッカーチーム・フォルツァ松本FCセカンドの皆川倫章代表だ。母体となるフォルツァ松本フットボールクラブは2000年に設立。現在はジュニア約100人、ジュニアユース約50人、シニア約30人、そしてフォルツァ松本FCセカンド25人の所属選手を含む総勢200人以上になる。松本市でも屈指の規模で、監督・コーチも約20人体制で育成指導に当たる。

直近では第30回長野県クラブユース選手権(Uー14)優勝、第11回レアルスポーツ杯(Uー10)での初優勝、その他複数回全国大会に出場するなど輝かしい実績がある名門クラブだ。

「指導者がサッカーの指導だけではなく、実際に自分たちもプレーしたい」との思いで設立されたのが「フォルツァ松本FCセカンド」。設立当時のメンバーは数えるほどになったが、指導者の仲間が多く入団した事でチームの運営を継続してきた。皆川代表は、「7年間、先輩方からチームを託されるも、試合に11人が集まらない事が増え、純粋にサッカーを楽しむ事が困難になり、チームの存続自体が危ぶまれる時期もあった。そこで力になってくれたのは少年サッカー時代のチームメイトの存在。彼らの入団を期に、人脈の広さが世代の垣根を越えて一人、また一人とメンバーが増え、基盤を支えてくれた。今ではサッカー未経験者まで一緒にプレーしている」と話す。

現在は30代から50代で構成され、複数の高校サッカー部OBグループの集まりが主となっている。長じて社会人となった現在はそれぞれが仕事を持っているが、合間を縫って試合には駆けつける。結果的にフォルツァ松本FCセカンドは、再び同好の士がサッカーを満喫する環境になっていた。

皆川代表自身、本業の傍らでのチーム運営が「負担ではない」と言えば真っ赤なウソになる。ユニフォーム管理やレフェリーの手配や確保、試合当日の選手スケジュール確認など、日々のタスクに追われる社会人チームをまとめるのは、気苦労が絶えない。

それでも――と、皆川代表は言う。

「縦105m横68mの広大な土地を全力で走ることが、大人になってからどれだけあるか。そこに属していない限り機会はない。無性にボールを蹴りたい、スパイクを履いて走りたい・・・と思った時に、この環境を失いたくないし守っていきたいと思っている。試合に勝っても負けても楽しく笑いあっている仲間たちがいると、苦労も吹っ飛んでしまう。またリーグ運営の皆様にも心より感謝している」。

松本平におけるサッカーは、この20年ほどですっかり市民権を得た。特に松本山雅FCがJリーグに参入して以降は、JR松本駅周辺を歩けば緑色のポスターやのぼりが視界に入ってくる。その文化が醸成されてきた源流をたどれば、この土地に暮らしてきた人々の、サッカーに対する愛情が土台にある。

フォルツァ松本FCセカンドにしても、何らかの特別な成績を残してきたわけではない。それでもユニフォームに着替えてスパイクを履けば、多忙な日常から少しだけ抜け出す魔法がかかる。蹴って、走って、むきになって、最後は笑い合う――。それもまた、この街が育んできたサッカー文化のワンシーンなのだろう。

 

撮影/鶴見由加里