松本山雅FCが2023年シーズンに向け、大きく舵を切った。昨季途中から指揮を執っていた名波浩監督が契約満了となり、新たに霜田正浩監督を招聘。それに先立ち、クラブ運営会社の組織にも手を入れて「トップチーム強化本部」を設けて下條佳明氏をスポーツダイレクター(SD)に指名。トップチーム強化にリソースを注ぎ込む体制を整え、2年目のJ3で捲土重来を期す。
従来は取締役会が担っていた監督・選手などの人事決裁権を、新設したSDに委譲。トップチーム強化本部には飯田真輝CB²のほか、外部から新たに強化担当の経験者を配置する。
神田文之社長は「(2012〜19年の)反町(康治)監督体制が終わった後に低迷が続いており、応援する方にとって非常に満足いかない思いをかけ続けていることがトップチームにおける問題だと認識している。『強い山雅』を作る上で、クラブの土台をより確かなものにする必要があると整理した」と説明した。
下條SDを中心に新監督の人選を進め、霜田氏に白羽の矢を立てた。下條SDは「目的とするのはやはりJ2昇格。それからもっと攻撃的な主体性のあるサッカーをやりたいということで話してきた結果、霜田監督とほとんどイメージが合致した」と経緯を話す。
霜田新監督は1967年東京都出身。日本サッカー協会技術委員長としてザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチ氏ら日本代表監督の招聘に中心的な役割を果たした。その後はシント=トロイデンVV(ベルギー)コーチを経てレノファ山口FC、大宮アルディージャなどで監督を務めた。攻撃的なスタイル構築に定評があり、変革を狙う山雅からオファーを受けた。
就任会見に臨んだ霜田新監督は「スタイルを変えるというのが目的ではなく、この山雅を本当に強くすることが目的。ではどうやったら今まで失点を少なくしてきたチームが得失点差を+20、30と大きくできるよう点を取れるか。そういう部分が一番のカギだと思っている。私はスタイルよりも結果を重視したい。まずはチームが勝つことを優先したい」と述べた。
クラブの現在地と未来図についても言及。「もちろん目の前の試合で勝った負けたは大事だが、もう一回松本山雅というクラブが這い上がっていく。松本山雅に関わる全ての皆さまとそういう物語を作れたら」と力を込めた。
並行してトップチームの編成も着々と進んでいる。昨季3バックの中央で31試合に出場した大野佑哉のほか田中パウロ淳一、山田真夏斗、安田理大、吉田将也、三ッ田啓希が契約満了となった。一方で橋内優也、村山智彦ら在籍歴の長いベテランのほか、ビクトル、安東輝、宮部大己、野々村鷹人、小松蓮ら14人が契約更新(12月18日現在)。2012〜16年に主力として在籍したMF喜山康平が7年ぶりに復帰する。
地元出身のシンボル・田中隼磨が40歳で現役を引退した今季。練り上げてきたアイデンティティを改めて整理して土台に置きながら、新たなスタイルで来季の昇格を狙う。
取材・撮影/大枝令