ゴールデンウィークの5連戦。新生・松本山雅FCは1勝4敗という結果で終えた。だが数字の裏で、もう一つの「戦い」が進んでいた。先発8人を入れ替えて臨んだ第13節と第15節。これまで試合出場機会に恵まれていなかった選手たちが、過密日程のなかで存在価値を示したのだ。

起点は4月26日、ホーム・AC長野パルセイロ戦の敗戦だった。続く中2日のジュビロ磐田戦、中3日のヴァンフォーレ甲府戦も白星に届かず、序盤3戦で3敗の苦境に立たされた。流れを変えたのは5月6日、第15節・アウェイのFC岐阜戦だった。3―0の快勝で連敗を断ち切り、勢いを持ち帰った5月10日のホーム藤枝MYFC戦は0―0、PK戦の末に屈した。
石﨑信弘監督は連戦中の磐田戦と岐阜戦で先発8人を入れ替えた。「中2日で次は中3日。元気な選手を使っていこうと、今まで出ていないメンバーを先発で使った」。磐田戦で今季初先発を果たし、ゴールも記録したDF二ノ宮慈洋は「悔しい思いをして過ごす時間が長かったので、思い切って爪痕を残す気持ちで臨んだ」と前を向く。岐阜戦の3―0には、今季初出場のGK上林豪、MF松村厳、追加点を奪ったFW井上愛簾が躍動した。「普段スタメンで出ていない選手たちがどれだけ目の色を変えて『スタメンを取ってやる』という気持ちでやっていくか。それが長いシーズンを戦う上で大事になってくる」と松村。その覚悟が、形となって表れた連戦だった。




一方、明暗を分けたのは「決め切る力」と試合の「締め方」だった。第6節で5―0と圧倒した長野にホームで敗れ、J2勢2チームとの対戦でも好機を作りながら決め切れない場面が続いた。連戦の前後でPK戦は2敗。DF白井達也は「PK戦になってしまったことも問題。まずは90分で勝ち切るところに目を向けてやっていかないといけない」と反省を口にする。終盤の試合運びに課題が残った同戦、キャプテンのMF深澤佑太も「クローザーとしてゲームを締める意識で入ったが、そこができなかった。キャプテンとして見つめ直さないといけない」と振り返った。
昇降格のないJ2・J3百年構想リーグは大詰めを迎えた。連戦を抜けたチームに残ったのは新たに芽吹いた競争意識と、決め切る力の課題。両者がどう交わり、混ざり合っていくか――。移行する新シーズンの開幕を控えるなか、サンプロ アルウィンのスタンドが見つめるのは、ピッチ内で進む静かな化学変化そのものなのかもしれない。
取材/大枝令
プロスポーツ
