「絶対に怒らない、否定もしない」。そんな独自の信念に基づく指導方針を掲げ、令和元年に産声を上げた場所がある。大町市にある「ジョージサッカースクール」だ。代表の川原涼コーチが目指すのは、単なる技術の向上だけではない。子どもたちが心から「自分らしくいられる」と実感できる居場所づくりである。

コーチ自身、かつてはプロを多数輩出する強豪校でしのぎを削った精鋭だった。しかし、不慮の怪我が選手としての道を閉ざしてしまう。その挫折を経て見出したのが、指導者という新たな使命だった。スクール名に刻んだ「ジョージ」という名は、高校時代コーチをしていた時の教え子から贈られた愛称である。地元・大町への恩返しをしたいという想いと、サッカーの裾野を広げたいという純粋な願いが、このスクールの揺るぎない原動力となっている。
指導の根幹にあるのは、徹底した「肯定」だ。ミスを責めず、一人ひとりの個性と歩幅を受け入れる。この安心感があるからこそ、子どもたちはスクールが大好きになり、自ずと前向きな姿勢が育まれていく。

それを象徴するのが、第1期生として開校当初から通っていた和田朱生くんのお兄さんのエピソードだ。ある日、小学1年生だった兄が、学校生活の疲れからか、つい寝過ごしてしまった。目が覚めた時には、練習開始からすでに15分が経過していたという。母の幸子さんは「もう遅いから、今日はお休みしたら?」と優しく諭したが、彼は「遅れてもいいから、絶対に行きたい!」と泣きながら訴えた。それは、遅刻して怒られるのが怖いからではない。「スクールへ行ってサッカーをしたい」という純粋な気持ちが彼を突き動かしていた。幸子さんも「楽しい雰囲気で指導してくれる。子どもの気持ちを盛り上げてくれるところがスクールの良さ」と口元をほころばせる。
スクールの門戸は、未就学児から高学年まで広く開かれている。未就学児や低学年は主にコーディネーショントレーニングで身体の動かし方を学び、ゲームでサッカーの楽しさを体感する。そこから成長の段階に合わせてドリブルやパスといった基本練習を取り入れ、一歩ずつ着実にサッカー技術を積み上げていく。

「来る者は拒まず、去る者は追わず」という潔いスタンスも、川原コーチの深い愛情の裏返しである。初心者の「やってみたい」という小さな芽を大切に育てるのはもちろん、もしも別の場所で、より高いレベルに挑戦したいという子がいれば、コーチは笑顔でその背中を押し、新しい門出を心から祝福する。

ジョージサッカースクール。そこは、子どもたちが失敗を恐れずに挑戦し、明日への自信を健やかに育む場所だ。コーチの温かな眼差しに見守られながら、北アルプスの麓、大町の地で、子どもたちの笑顔は今日もまぶしく輝いている。

【和田 朱生 くん 6歳】
去年の4月からサッカーをはじめて、もうすぐ1年になります。このスクールはとにかく楽しい!一番好きなのは試合で、ボールを触っている時も、シュートが決まった時も嬉しいです。少しずつ上手になっているのが自分でも分かるので、1年生になっても、このまま楽しくずっとサッカーを続けていきたいです。

【代表 川原 涼 さん】
初心者も経験者も大歓迎です。年齢や性別を問わず、サッカーをしたい気持ちがあれば、絶対に楽しませてあげたいと思っています。上級生が下の子の面倒を見るアットホームな雰囲気の中、自分から『やりたい!』と思える楽しさを何より大切にしています。興味のある方はぜひ一度、のびのびとした環境へ体験に来てください。

取材・撮影/児玉さつき
