医療コラム

人間万事塞翁が馬 vol.45     痛みの正体

転んだあとに膝が腫れた、ボールが当たって指が曲がらないなど、ケガをしたとき体の中では何が起こっているのでしょうか。整形外科医は、まず患者さんの話を聞き、触って、動かして、身体所見をとりながら「体の中でどのようなケガや異常が起きているのか」を診断するための手がかりを集めていきます。そして、その手がかりをもとに診断が正しいかどうかを客観的に評価するために画像検査が行われます。今回は、整形外科でよく使われる4つの画像検査について紹介します。
1.単純レントゲン(X線)
X線という目に見えない電磁波(放射線)をあて、身体の内部を映し出す検査です。X線は身体を通り抜ける性質があり、骨や軟部組織を通り抜ける量の違いを利用して骨を映し出します。骨の状態評価するための最も基本的な検査です。
長所
① 短時間で撮影でき、体への負担が少ない
② 骨折や骨の変形をはっきり確認できる
③ 費用が比較的安い
短所
・筋肉や靱帯、軟骨などのやわらかい組織はほとんど写らず、評価が難しい
得意な疾患・部位
骨の病変、関節の変形、成長軟骨の評価など
2.CT(コンピュータ断層撮影)
CTはレントゲンと同じくX線を使った検査ですが、1方向から撮影するレントゲンとは異なり、体の周囲をぐるりと回りながら何百枚もの画像を撮影することができます。体を薄くスライスした「輪切り画像」を作り、さらに骨や血管などを立体的に再現することができます。
長所
① 骨の傷や小さなずれを非常に細かく描出できる
② 関節内の小さな骨片も見逃しにくい
③ 手術の必要性を判断できる、術前計画に役立つ
短所
・レントゲンより被ばく量が多い。靱帯や軟骨、筋肉などの評価は困難
得意な疾患・部位
レントゲンで見えない骨折、関節内の病変、顔面、脊椎の骨評価、脳、肺や消化器など内臓の評価
3.MRI(磁気共鳴画像)
強い磁石の力を使い、体の中にある水素の反応を利用して画像を作る検査です。放射線は使わず、磁場と電波を組み合わせることで骨だけでなく靱帯や軟骨、筋肉、骨の中の状態まで詳しく写し出すことができます。レントゲンでは写らない異常や、軟部組織の損傷、骨軟部腫瘍を診断する際に非常に役立つ検査です。
長所
① 被ばくがなく成長期の子どもにも安全
② 靱帯・半月板・軟骨・筋肉を詳細に評価できる
③ 骨の中の異常(疲労骨折の初期など)を発見できる
短所
・検査時間が長く、じっとしている必要がある(動くと画像が乱れる)
・体内金属があると検査が難しい
得意な疾患・部位
前十字靱帯損傷、半月板損傷、疲労骨折、椎間板障害、肉離れなど
4.超音波検査(エコー)
超音波と呼ばれる人には聞こえない音波を身体にあて、その反射を利用して体内を調べる検査です。筋肉や腱、靱帯、骨などに超音波を当てると跳ね返り方が異なるため、その違いを画像として映し出します。体を動かしながら検査ができるため、筋肉の動きや靱帯の張り、腱の状態をリアルタイムで観察することができます。
長所
① 被ばくがなく、何度でも安全に行える
② 動かしながら痛みの原因を評価できる
③ ポータブルのものではスポーツ現場でも活用可能
短所
・骨の裏側など深い部分の評価は難しく、検査する人の技術によって見え方が左右される
得意な疾患・部位
肉離れ、靱帯損傷、成長痛、アキレス腱炎、関節水腫や軟部腫瘍など

 画像検査は、単独で診断を決めるものではありません。身体所見という「ヒント」をもとに、正しい検査を行うことで初めて意味を持ちます。見えない体の中を正しく理解することが、早い回復と安全なスポーツ復帰につながります。

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▶PROFILE 百瀬 能成
一般社団法人MOSC 百瀬整形外科スポーツクリニックの院長。
スポーツの世界に「Player’s first(プレイヤーズ・ファースト)」という言葉があるように、患者様を第一に考える「Patients’s first(ペイシェント・ファースト)」を理念として、スポーツ傷害や整形外科疾患の治療にあたる。
松本山雅FCチームドクター。医学博士