苦難の道のりを歩んだ最後に、せめてもの意地を示した。11月29日のJ3最終節・ギラヴァンツ北九州戦。開始5分に失点したものの、MF村越凱光とFW安藤翼がゴールを挙げた。今季初の逆転勝ちを最終節で収め、退任が発表済みだった早川知伸監督に勝利をプレゼントした。

「(J2昇格を逃したことを)ハヤさん(早川監督)だけのせいするのは絶対に嫌だったし、最後に何とか勝って終われればと思っていたので良かった」。キャプテン菊井悠介が振り返ったように、「ハヤさんのために」という合言葉でつかんだ一勝でもあった。
そのキャプテン菊井は、ケガを押して強行出場。60分には必死に脚を動かして安藤の逆転ゴールをアシストした。自身は流通経済大を卒業してから4年間松本山雅でプレー。シーズン終了後にはJ2藤枝MYFCへの移籍が発表され、この試合が山雅でのラストゲームとなった。

通算11勝10分17敗(勝ち点43)の15位。2012年にJ2参入して以降、最低の成績でシーズンを終えた。「切り替え」「ハードワーク」「規律」など、チーム始動当初に掲げたテーマは試合が進むごとに薄れた。自陣での守備にタイトさが見られずあっけなく失点し、攻撃も連動性や迫力を欠いた。
一時はJ2〜J3でクラブワーストの6連敗と泥沼にはまり込む。シーズンを通して連勝は1回だけで、昇格争いに絡むことなく沈んだ。「一日一日の練習を真剣に情熱を持ってやっていたかと言われたら、多分やっていない選手の方がほとんど。温度感だったり、価値観のズレだったり…僕が見てきた山雅の中で、今年はかなり酷かった」。最終節後の取材エリアで、村越は率直な思いを口にした。
とはいえ、外的要因による困難が多かったのも確かだ。開幕直後に松本のグラウンドが使用できず、山梨県まで日参した。ホーム開幕戦の信州ダービーは雪で、アウェイの第28節は雷でそれぞれ延期。そして10月にはサンプロ アルウィンが鉄骨部材落下に伴う使用停止となり、実質的に〝アウェイ10連戦〟のハードな試合消化を強いられた。

長野Uスタジアム、JITリサイクルインク スタジアム(山梨)、そして最終節の味の素フィールド西が丘(東京)。県内外3会場4試合のホームゲーム開催を余儀なくされ、クラブとしても大きな負担に。黒字ベースで推移していただけに、急転直下の出来事だった。

ただスタジアムの復旧工事は進み、来季はスタートから使用可能となる見込みだ。新監督にはJリーグ史上最多の858試合指揮という経歴を持つ石﨑信弘氏を招聘。柏レイソルなどで昇格経験を5回持つ百戦錬磨の指揮官を迎え、心機一転のリスタートを切る。

取材/大枝令
