「勝った時のうれしさとか、言葉にできないような感情。それをもう一度味わいたい」
アルペンスキー選手の澤村玲奈(松商学園高校3年)は、弾けんばかりの笑顔でスキーに懸ける思いを語る。その一心でハードなトレーニングにも耐え、全力で競技に打ち込む日々を送っている。

スキー好きの父親の影響で3歳からスキーを始め、小学3年生で本格的にアルペンスキーの世界に足を踏み入れた。「小学生時代は土日にスキーができるのが楽しくて、週末が待ち遠しくて。でも、大会ではなかなか勝てなくて悔しい思いをすることが多かったです。限られた時間の中で、滑走量の豊富な山麓地域の選手達に勝つためにはどうしたらよいか考えるようになって、高学年の頃からオフの陸上トレーニングで体力強化や身体操作の向上に力を入れるようになりました」と当時を振り返る。
この取り組みが大きく花開いたのは中学3年生の時だった。第60回全国中学校スキー大会の大回転で優勝、回転でも準優勝に輝く。さらにU16日本代表として出場した第31回アジアチルドレン選手権大会では、大回転・回転ともに優勝の座を勝ち取った。

同年、長野県代表として出場したフランス・バルディゼール国際大会でも、U16日本選手派遣史上最高位となる回転2位入賞を果たし、ユースの国際大会でも確かな結果を残した。

高校へ進学し、世界の舞台へと意気込んでいた澤村だったが、その前には年齢制限という壁が立ちはだかっていた。一般的に高校1年生になるとFIS年代となり、シニアカテゴリーに移行するが、早生まれの澤村は年齢的な制約からFIS(国際スキー連盟)公認大会への出場が叶わなかったのだ。
それでも澤村は下を向くことなく、前を向いて歩み続けた。オフシーズンには進学先の松商学園高校で陸上部とウエイトリフティング部に所属し、シーズン中のハードなスケジュールにも耐えうる体づくりに集中した。その成果もあり、体力は向上したが、成長した体で新しい板に慣れるのに予想以上に時間がかかってしまい、全国大会では思うような滑りができなかった。それでも、シーズン後半には、中学3年時にも出場したバルディゼール国際大会で4位を獲得、2年連続の入賞を果たした。

そして昨シーズン、ついに念願のFIS公認大会への出場権を得た澤村。「自分がどこまで行けるのか楽しみだった」「FISカテゴリーの1年目からしっかり戦って、ナショナルチームの基準ポイントをクリアする」という強い決意を胸に挑んだシーズンは、見事に実を結ぶことになる。
シーズン中盤の、FISほうのき平GS大会と、FIS菅平高原SL大会で優勝し、FISレースで2勝。また、3月には第37回全国高校選抜スキー大会の大回転優勝と総合優勝を獲得。2年ぶりに全国大会で勝利し、自信を深めた。さらに、シーズン後半のFIS野沢温泉カップのSLレースでシーズンのベストポイントを獲得し、最終的にはSL世界ランキング233位(FIS BaseList 2026より)となり、目標としていたポイントをクリアしてナショナルチーム入りを果たした。
現在高校3年生となった澤村は、8月、10月~12月、1月にヨーロッパ遠征を控えている。さらに「大学へ進学し、競技や将来に活かせるような分野を学びたい」と、競技と学業の両立を目指す高い志を持つ。
しかし、大学進学も控える中、遠征費の大半が自己負担となることから、新たな試みに挑戦することを決心した。「今までは活動費のほとんどを両親にサポートしてもらってきましたが、将来のことを考えて自分でもアクションを起こしたいと思った」と、クラウドファンディングに挑戦することに。自立への第一歩を踏み出した。
FISカテゴリー2年目となる今シーズン、澤村が掲げる目標は明確だ。「来季もナショナルチームで活動できるよう、目標のFISポイントを更新し選考基準をクリアすること。世界ジュニア選手権の出場権を獲得し、大会では15位以内に入ること」。日本でわずか2人しか出場権が得られない世界ジュニア選手権への切符を狙う。
そしてその先に見据えるのは、「2030年、2034年に開催する冬季オリンピックや、ワールドカップに出場できる選手になること」という大きな夢だ。
苦しい時期を乗り越え、自らの力で道を切り開こうとする澤村玲奈。筆舌に尽くしがたい感動を求めて、世界の頂点を目指す挑戦は続く。
※GS=大回転・SL=回転

Profile澤村 玲奈(さわむら・れいな)
アルペンスキー選手
2008年3月17日生まれ。松本市出身。松商学園高校3年。昨シーズンは全国高校選抜スキー大会で大回転優勝と総合優勝を達成。FISレースでも2勝を挙げ、目標としていた国際基準であるFISポイントで全日本強化指定の基準をクリア。今シーズン、選考基準を満たした男女各8名以内の選手に与えられる、全日本アルペン強化指定B選手(ナショナルチーム)に選出された。
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取材/児玉さつき
